1mm弱

世の中には「知らなきゃよかった…」という事が数多く存在すると思う。

田舎から、よく米が送られてくる。

精米前の玄米の状態で、米袋ギッチリ。その量30kg。

そう簡単に食べられる量ではなく、近所の自動精米所で半分ずつ白米にしては何ヶ月か掛けてチマチマチマチマ食べている。

半分といっても15kgだ。

店頭で見かける大きめの米パッケージは10kg。それよりも多いわけだ。

米びつをギッチギチに満配にしてもまだ余る。減ってはつぎ足し減ってはつぎ足しで、米びつが空になる事は殆ど無かった。

お米の心配をする日がない…なんと幸せな事か。

田舎の両親と、実際に米を作っている叔父ちゃん叔母ちゃんに感謝をしつつ、その日食べる分の米を米びつから二合半取り出す。

なにやら黒いお米がポツポツと動いている気がした。

気がした、じゃない。動いてる。

「ぬああああああああ!!」

183cm81kgの男は悲鳴を上げた。若干ピンク色の声だ。

乙女のような腰つきになった大男は、恐る恐る米を見てみる。

1mm弱の虫が、比較的速くサササササと動いている。

「なに考えてんだよ!!!!!」

吐き捨てるように一人で叫びながら、猛烈に後ずさりする男。

突っ込み方が明らかに間違っているが、そんなことはどうでもいい。なにしろ、超内股だ。なりふりも言葉の整合性も構っていられない。

1mm未満に負ける1830mmの男。なんて小さな男なのだろうか。

いや、でも待って欲しい。1mmが一匹だけならそんなに驚く事ではないが、何万匹のアリに襲われたら人間はほんの数秒で骨だけになると言う。

1mmを侮ってはいけない。1mmを笑う者は1mmに泣く。

そんな1mmが、約3cm四方に1匹の割合でワラワラと動いているのだ。

ということは、この十数kgの白米が入った米びつの中には一体いくつの黒いお客さんが…………。

米びつ上部のフタを取り、半透明のゴミ袋を被せ、逆さまに。

一気に米の重みで突っ張りきるゴミ袋。

間髪を入れずに袋を固結び。その動きたるや、熟練の職人のようだ。なんの職人だか知らんが。

それにしても何故半透明なのか。思わず中を覗き込みたくなってしまうではないか。行政はこういう事態を想定しないのか。

ついつい覗いてみる。彼らは楽しそうに白い野山を走ったり潜ったり出てきたり大忙しだ。

いい加減にしろって

相変わらず、ツッコミがよく分からない。

とにかく、敵の正体を明らかにせねばならない。ウヤムヤでは今後の生活に支障を来す。なにしろ、食の基本、生命維持の根幹を担う物資の問題だ。そして米袋にはまだ精米前の玄米が15kg、同じく精米前の未開封の米袋30kgがもう一つ、玄関付近に無造作に置いてあったりする。

不測の事態を備え逃走経路を確保、超及び腰で慎重に慎重に開封をし確認したが、動くものはいなかった。

玄米の状態だと、比較的虫は発生しにくいようだ。

webにて『米・虫』等の語句で検索してみる。

米につく虫は、代表的なものでなんと6~7種類存在する。

胚芽部分や”ヌカ”を好物とするものや、米と米の間に卵を付着させるもの、米粒の中に卵を産み付けるものなど、様々…

って内部に産み付けるのかよ…!!(泣)

殆どの場合、稲の時点で卵が産み付けられ、しかも体から出す粘着状の物質により産卵の痕跡をふさぐので見つけるのは至難の業、とのこと。

お米以外の栄養素がこれまで何百匹〜何千匹分、自分の肉体に吸収されたのだろうなぁと、目の前が真っ暗になる。

もう少し調べてみる。

虫の種類によっては、成虫になると”蛾”となり、蓋を開けるとバサササーッと無数に飛び交う、とのこと。

…調べなければよかった…。

対応策としては、精米した後は、冷暗所や冷蔵庫で保管する、鷹の爪を2〜3本、お米の袋の中に入れておくと良い、などが挙げられるが、前者は「卵を孵化させない為」という極めて消極的な対処方法だ。後者は残念ながら既に実行済みだった。

虫の卵を食え。

世間ではそういう結論となる。

そして、洗えば大丈夫・米を炊く際に高温殺菌されるので問題ない・ぶっちゃけ虫が付くのは良い食べ物の証拠で、穀物を食べている虫なので体内に入っても問題ない、との詭弁が始まる訳だ。

なんだ?じゃあ虫が群がるウ●コは良い食べ物なのか!?テキトウな事を言うな!!

webにて『ウ●コ・食べる』等の語句で検索してみる。

‥‥世の中には「知らなきゃよかった…」という事が数多く存在すると思う。

カルチャーショック療法により、冷蔵保存をした虫の卵を喜んで食せるようになった今日この頃です。

[初稿・2006.09.11]

Author: 一條 マサヒデ